今年最初のsmallcampは、近代デンマーク文学の研究者である奥山裕介氏をお招きしての読書会です。いつもお力になって下さるK氏のご紹介で実現しました。
日時|2015年2月7日(土)18時から。
場所|吉祥寺 中道通り イラストレーション事務所にて
会費|無し(飲食持寄りにつき)
持物|ご自分が飲みたいもの・食べたいもの。紹介したい本。
講師|奥山裕介 氏
お申込み (お問い合せ)|info@smallcamp.org
【お名前、参加にあたりコメント】をお書き添え下さい。
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課題図書|イサク・ディーネセン『不滅の物語』
www.amazon.co.jp/dp/4336035903
彼は貝殻を耳に当てた。
遠くで波が砕けるような、深く低い音が聴こえた。
エリシャマの顔がまさにあの船乗りが数分前にみせたのと同じ表情を浮かべた。[…]
「これを昔にも聴いたことがある。ずっとずっと昔だ。しかしどこで?」
(イサク・ディーネセン『不滅の物語』より抜粋)
イサク・ディーネセンという男性名の作家の正体はカーアン・ブリクセン。20世紀デンマークの著名な作家です。代表作『アフリカの日々』では、18年におよぶアフリカの農場での女主人としての体験が描かれます。Isakは「彼は笑う」という意味。2重仮名作家としての彼女は、ヨーロッパの周縁として様々な狭間にあるデンマークという国の在り方を映すかのようです。複数の視点を内包するディアスポラとして、彼/彼女はナショナリティやジェンダーを越境し、軽やかに笑うのです。
『不滅の物語』で描かれるミスター・クレイは、典型的な近代ヨーロッパ人です。エリシャマ(ユダヤ人)はヨーロッパ世界(資本主義)と外部世界(物語)の仲介であり、“海”(自然/未開世界/非ヨーロッパ世界)から“陸”(文明/資本主義世界)へと流通する「物語」は消費財として機能します。そうした設計の世界においてブリクセンは、たったひとつ、自分だけの固有の物語をわたしたちに示してくれます。それは決してたやすく消費されないものです。
奥山氏には歴史的な視点から、近代デンマーク文学についても包括的なお話しを伺ってまいります。単一民族であるデンマークという国の成立ちは、わたしたちの住む日本にとても良く似ています。歴史を通して読書体験を深め、分かちあうことができれば幸いです。
道化に扮したブリクセン/ディーネセン(© Karen Blixen Museet)
奥山裕介(おくやま ゆうすけ)氏 プロフィール
大阪大学大学院文学研究科博士後期課程。2012年4月から2014年3月まで日本学術振興会特別研究員。 専門は近代デンマーク文学で、創作テクストにみられるユラン半島の地方風景と文化的自己/他者像の関係について博士論文を執筆中。
Organizer | S.K